院長のコラム

2008年06月19日 セラチアという菌について

 大変ご無沙汰していりました。
 最近、三重県の某整形外科で、点滴治療した後、気分不良を訴えられた患者様が続出し、大変なことになりました。その患者さまの早期の回復を祈ります。
 原因は、点滴の作り置き・・・。当院でも点滴治療は行いますが、作り置きは考えられないことです。いくら忙しくても、作り置きするぐらいであれば、点滴の中に入れるお薬を、もっと少なくするとか、簡素化できないか・・・とか、そう、考えます。
 さて、そのセラチア菌にていて、少し私事を・・・

 以前、病院で勤務医をしていた頃、泌尿器科ゆえに、尿道の管を入れる患者様が多かったわけですが、一時、突然の高熱を発症する患者さまが何人かおられました。どの患者さんも、おしっこはきれい。下痢もなく、胸のレントゲンもきれい。原因は??という状況でした。
 そこで、徹底的に原因を追求すべく、菌の培養検査を行いました。すると数日して、”セラチア菌”がおしっこから検出されました。
 セラチア菌は、多剤耐性であることが多く(抗菌剤が効きにくい)、一般の抗菌剤では無効でした。ある特殊な薬しか効かず、その時は、その薬を使用することで、事なきを得ることができました。
 その時、セラチア菌についていろいろ調べました。
以下のようでした・・・

・症状は、急に変化し、さらに高熱を伴い、菌血症(体に菌がまわる)に至りやすいこと。
・概して、おしっこの汚れなど、見た目の異常がなかなかわかりにくいこと。
・院内感染しやすいこと。
・高齢の患者さんが、この菌に感染すると、適切な抗生剤を使用しないと、命にかかわることになることがある。

などでした。
院内感染菌としては、多剤耐性菌(抗生剤が効かない)のは、MRSAや緑膿菌が、有名ですが、この時、セラチア菌も怖い菌であるなあ〜と、強く実感しました。

 実は、その後、半年ぐらいしてから、某堺市内の病院で、「院内感染・高齢者が多数亡くなった・セラチア菌が検出された・・・・」などの悲しい事件が起こりました。
 とにかく、この多剤耐性のセラチア菌は、この菌の可能性を念頭において、”効く”抗生剤を使わないと、えらいことになる〜、そんな菌です。
 難しい内容になりましたが、セラチア菌を経験しての、私事でした。